【小技】nmとeVを一瞬で変換する方法《1240の法則》

Point

・1240を割ればnmとeVを一瞬で変換できる  


量子力学では、光子のエネルギーを表す際に「nm」や「eV」といった単位がよく用いられる。波としての性質が強い可視光付近では「nm」が使われやすく、逆に、粒子としての性質が強いX線付近では「eV」が使われやすい。
 とはいえ目的によっては、2つの単位を変換して使いたいといった場面がよくある。そこで、今回は「nm」と「eV」を一瞬で変換するテクニックを紹介する。


1240の法則

結論から言うと、「nm」と「eV」を変換するには、1240を割ればよい。つまり、nmの値で1240を割ればeVの値に変換され、逆に、eVの値で1240を割ればnmの値に変換される。
 数式で表すと

  
\begin{align}
E\ [\mathrm{eV}]&= \frac{1240}{\lambda\ [\mathrm{nm}]}\\
\\
\lambda\ [\mathrm{nm}]&= \frac{1240}{E\ [\mathrm{eV}]}
\end{align}


である。今回の記事で伝えたいことはこれだけである。


具体的に計算してみよう。例えば、紫色の400 nmの光子エネルギーは1240 ÷ 400 = 3.1 eVとなる。可視・紫外領域の光子エネルギーはだいたい数eVくらいになることは知っておくとよいだろう。
 このくらいのエネルギーは、化学反応に関わる電子を移動させるのに必要なエネルギーと一致するため、可視・紫外領域の光は化学反応を開始したり、促進するために利用されることがある。 また、化学反応を利用した製品である電池の起電力が1 Vくらいであることとも関係している。


逆に、例えば、300 eVの光の波長は1240 ÷ 300 = 4 nmと計算され、X線領域の光であることが分かる。X線は高い光子エネルギーをもつことがここからわかるが、これがX線は危険であると言われる理由となっている。



1240の法則の証明

このテクニックを使用する分には特に導出の証明を知っておく必要はないが、一応記しておこう。

まず、光子エネルギーの式を記す。

  
\begin{align}
E\ [\mathrm{J}]&= h\nu \\
&= \frac{hc}{\lambda\ [\mathrm{nm}]\times10^{-9}}
\end{align}


プランク定数と光速を代入して

  
\begin{align}
E\ [\mathrm{J}] \sim \frac{1.98645\times10^{-16}}{\lambda\ [\mathrm{nm}]}
\end{align}


ここから、エネルギーの単位[J]を[eV]に変換していく。 ここで、1 eVの定義は「1 Vで加速された1つの電子がもつエネルギー」なので

  
\begin{align}
1\ \mathrm{eV} &= e\ [\mathrm{C}] \times 1\ [\mathrm{V}]\\
&= 1.60218\times 10^{-19}\ [\mathrm{J}]
\end{align}


となる。これが[J]と[eV]の変換式である。これを使えば、

  
\begin{align}
E\ [\mathrm{eV}] &\sim \frac{1.98645\times10^{-16}}{1.60218\times 10^{-19} \times \lambda\ [\mathrm{nm}]}\\
\\
&\sim \frac{1240}{\lambda\ [\mathrm{nm}]}
\end{align}


が得られる。eVからnmに変換するための式は、 E \lambdaを入れ替えれば得られる。
 ここまで、1240と述べてきたが、正確には1240よりほんの少しだけ小さくなるようだ。ただ、よほどの精密さが必要なければそこまで問題にはならない。