ニンジンがオレンジ色に見える理由《無限の井戸型ポテンシャル》

Point ニンジンがオレンジ色に見える理由は、無限の井戸型ポテンシャル問題を解くことで説明できる。 今回は、量子力学の授業で最初に学ぶ「無限の井戸型ポテンシャル問題」を扱う。この問題は量子力学の基本を身につける上でとても良い教材である。しかし、…

すべての素数を使った美しい式《オイラー積》

Point 素因数分解を利用することで、全ての素数を使った式が作れる 今回の記事では、私が好きな数式の1つである以下の式について解説する。 この式は「オイラー積」と呼ばれている。左辺には全ての自然数が、右辺には全ての素数が含まれており、それらが等…

光を細くするだけで現れる不思議な輪っか《フラウンホーファー回折》

Point ・光の径を小さく丸く絞ると輪っか状のパターンが現れる ・フラウンホーファー回折によって説明できる 今回の記事では、光の面白い性質について解説する。図1のように、丸い穴の開いたスリットに光を通すという実験をしてみる。図1上のように、スリ…

【小技】nmとeVを一瞬で変換する方法《1240の法則》

Point ・1240を割ればnmとeVを一瞬で変換できる 量子力学では、光子のエネルギーを表す際に「nm」や「eV」といった単位がよく用いられる。波としての性質が強い可視光付近では「nm」が使われやすく、逆に、粒子としての性質が強いX線付近では「eV」が使われ…

ブラケット記法の大雑把な読み方

Point ・ブラケットは右から読む ・内積はブラの成分がケットの中にどれだけ含まれているかを表す 今回は、ブラケット記法を大雑把に読む方法を説明する。量子力学のブラケット記法の説明をするときは、必ずと言ってもいいほどベクトルや行列が一緒に登場す…

直線偏光の偏光方向を回転させる《1/2波長板 》

Point ・1/2波長板を使うと偏光方向が回転する ・Fast軸またはSlow軸に対して対称に反転させた方向まで回転する 今回は、直線偏光を回転させるために使用する1/2波長板について解説する。はじめに、位相を波長の2分の1ずらすと何が起こるかについて解…

【2023年ノーベル物理学賞】アト秒レーザーはX線!?《短パルス化の歴史》

Point ・2000年ごろにブレイクスルーがあり、アト秒レーザーが生まれた。 ・パルス幅は1周期よりも小さくすることができない。 ・X線は1周期がアト秒レベルであるため、アト秒レーザーとして利用できる。 とてつもなく短い時間だけ光るアト秒レーザーは実…

【2023年ノーベル物理学賞】アト秒レーザーで電子の姿を切り取る

Point ・アト秒レーザーとは、アト秒という極めて短い時間だけ光るレーザーのこと ・電子はものすごく軽いため超高速で動いている ・アト秒レーザーは、高速に動く電子の一瞬の姿を切り取ることができる 2023年のノーベル物理学賞がアト秒レーザーに関す…

円偏光の作り方《1/4波長板 》

Point ・直交する2つの直線偏光の位相を1/4波長ずらすと円偏光になる ・複屈折結晶を用いれば、任意の位相差を与えることができる ・直線偏光を円偏光に変換する光学素子を1/4波長板という 円偏光を作る方法をネットで調べてみると、数式や専門用語を使…

Blu-rayがDVDよりも大容量な理由《光の波面》

Point ・波面とは、波の位相が揃った面のこと ・光は波面に対して垂直な方向に進む ・光の波長が短いほど集光点を小さくできる 今回は、回折シリーズの3回目として波面と呼ばれるものについて取り上げる。 光には波面という性質があり、この波面の形を調べ…

光の回折2:光は波なのになぜまっすぐ進むのか

Point ・波は波長が長いほど広がりやすく、波長が短いほど直進しやすい ・光は波長が短いためまっすぐ進む 今回は、回折シリーズの2回目として光の直進性について取り上げる。懐中電灯の光や、窓から差し込む太陽光に見られるように、光(可視光)は基本的に…

光の回折1:スリット幅と光の広がりやすさ《素元波》

Point ・光がスリットを通過したとき、スリットの幅が小さいほど光は広がりやすい ・光の広がりやすさは素元波の干渉で説明できる 今回の記事では、光が障害物の裏側に回り込む現象である「回折」について紹介していく。光の回折を説明するための分かりやす…

光が屈折する理由を車を使って説明する《光の屈折》

Point ・光の屈折は車の喩えを使って直観的に説明できる ・光が屈折する理由は物質によって光の速度が異なるため 空気から水に向かって光が侵入すると、光が屈折するのは日常目にする光景である。しかし、その理由を説明しようと思うとするとなかなか難しい…

ブリュースター角で光の反射を消す

Point ・ブリュースター角とは、p偏光の反射率がゼロになる入射角 ・反射光と透過光のなす角が90度となる ・双極子の振動方向に光が発生しないことから説明できる ブリュースター角とは 以下に示した図は、以前の記事で紹介した入射角に対するp偏光とs偏光の…

フレネル係数で遊ぶ3:複素屈折率への拡張

Point ・反射率は、屈折率の差と消衰係数の差がどちらも大きいほど上がる ・消衰係数を考慮すると位相変化が0°および180°以外の値にもなりうる 「フレネル係数で遊ぶ2」までは、屈折率を実数と仮定して話を進めてきた。しかし、屈折率の虚部にあたる消衰係…

フレネル係数で遊ぶ2:ななめ入射での反射率と透過率

Point ななめ入射での反射率と透過率は入射角に依存する。 また、s偏光かp偏光かによっても異なるふるまいを示す。 前回の記事では、垂直入射におけるフレネル係数について解説した。今回は、光がななめに入射した場合の反射と屈折について深掘りしていく。…

フレネル係数で遊ぶ1:垂直入射を中心に

Point 入射光の電場にフレネル係数を掛けると、 反射光の電場および透過光の電場に変換できる。 今回はいよいよ光学の分野で最も重要な式の1つであるフレネル係数について見ていく。 フレネル係数の応用範囲はかなり広いため、これを理解するだけで光への理…

p偏光とs偏光の違い

Point ・p偏光は、入射面に対して平行な偏光 ・s偏光は、入射面に対して垂直な偏光 光の反射率や透過率は、光の偏光方向(p偏光とs偏光)によって変わってくる。ただ、どっちがp偏光でどっちがs偏光が忘れてしまうことがよくあるので、この記事では、これらの…

複素屈折率とは

Point 複素屈折率とは、屈折率nと消衰係数kを合体させたもの。 消衰係数とは、物質がどれだけ光を吸収するかを表したもの。 大学の光学を学んだ際、実数のはずの屈折率が複素数に拡張され面食らった経験がある。この記事では、複素屈折率とは何か、およびそ…