・ブリュースター角とは、p偏光の反射率がゼロになる入射角 ・反射光と透過光のなす角が90度となる ・双極子の振動方向に光が発生しないことから説明できる
ブリュースター角とは
以下に示した図は、以前の記事で紹介した入射角に対するp偏光とs偏光の反射率である。
赤色のp偏光に注目すると、60°付近に反射率がゼロになる入射角が存在している。このときの入射角をブリュースター角とよぶ。反射率がゼロになるということは、ブリュースター角ではp偏光は100%透過することになる。
ブリュースター角の数式
次に、ブリュースター角の求め方や条件などを定量的に探っていく。p偏光の反射率がゼロになるということは、p偏光のフレネル係数をゼロとすればよいだろう。 準備のため、まずはフレネル係数の式変形を行っていく。
スネルの公式 () を使って屈折率を消去すると
2倍角の公式 () を使うと
和積の公式 () を使うと
最終的に、以下のように単純な式に変形できる。
この式がゼロとなるには、分子がゼロになるか、または分母が無限大になればよい。分子がゼロとなる場合は、 となるが、これは屈折をしていないことになってしまうので不適である。一方、分母が無限大となる場合は、
が得られる。この式は、反射光(実際には存在しないが)と透過光のなす角が90°であることを表している。図2はこれを模式的に表したものである。
続いて、ブリュースター角を求める式を導出する。 とスネルの公式 () を用いてを消去すると
とをにまとめて、の式で表すと
となる。これがブリュースター角を求める式である。実際に、図1の条件である () を代入すると、 が得られ、図1の反射率ゼロでの角度と一致する。
なぜ反射率がゼロになるのか
ここまで、ブリュースター角の性質を説明してきたが、そもそもなぜ特定の入射角でp偏光の反射率がゼロになるのだろうか。実はこれは、さきほど言及した「反射光と透過光のなす角が90°である」ことが効いている。
本題に入る前に、先に反射光の正体について考えてみる。直感的には反射光とは、入射光がそのまま向きを変えて反射した光というイメージが自然だと思われるかもしれない。しかし、ここでは少し見方を変えて、反射光とは入射光によって振動させられた双極子から発生した光としてとらえてみよう。
電磁気学において、振動する双極子からは光が放出されることが知られている。このとき、双極子の振動に対して垂直方向に最も光が発生しやすい一方、振動に平行な方向には光は放出されない。これを図で表すと以下のようになる。
これを踏まえて、ブリュースター角ではp偏光の反射率がゼロになるという話に戻ろう。先ほど述べたようにブリュースター角では「反射光と透過光のなす角が90°」になるのであった。p偏光ではこのとき、透過光の偏光方向と反射光の進行方向が平行になる(図2参照)ことが分かるだろう。透過光にさらされた双極子はその偏光方向に振動するため、それに平行な方向に光は発生しない。だから、反射光はゼロになるのである。
まとめると、 「ブリュースター角において反射光と透過光のなす角は90°となる」 →「このときp偏光では、透過光にさらされた双極子の振動方向が反射光の進行方向と平行になる」 →「双極子振動に平行な方向には光は発生しない」 →「p偏光の反射率はゼロになる」 ということだ。
こう考えると、なぜs偏光では反射率がゼロになる入射角がないかわかるだろう。s偏光では、透過光の偏光方向が反射光の進行方向と平行になることは絶対にないからである。