光が屈折する理由を車を使って説明する《光の屈折》

Point

・光の屈折は車の喩えを使って直観的に説明できる
・光が屈折する理由は物質によって光の速度が異なるため  


空気から水に向かって光が侵入すると、光が屈折するのは日常目にする光景である。しかし、その理由を説明しようと思うとするとなかなか難しい。そこで、この記事では、光を車に見たてて直観的な説明を試みる。


光の屈折の事前知識

本題に入る前に、光の屈折の特徴について見ていく。図1のように、屈折率が異なる物質の境界に光が到達すると、光は進行方向を変える。この現象を屈折とよぶ。屈折率の関係が  n_1 <  n_2 の場合は、光は図1のように進行方向が下へ向くように折れ曲がる。

図1:光の屈折 ( n_1 <  n_2の場合)

光がなぜ物質の境界で屈折するのかを理解するには、光の速度が屈折率によって変化することを知っておく必要がある。実際、物質中での光の速度を c'とすると、

  \displaystyle c'=\frac{c}{n}

と表される。ここで、 cは真空中での光速、 nは屈折率である。つまり、屈折率  n が大きいほど、光は遅くなる。


図1のように屈折率の関係が  n_1 <  n_2 の場合は、光が速い領域から遅い領域へ侵入するという状況になる。そこで、以下では、同様の状況を車を使って再現することで屈折という現象を直観的に理解してみよう。


光の屈折を車で説明する

それでは、ここからは光を車に見たてて話しを進めていく。図2に、走っている車を上から見た様子を示す。上側の黒い領域は舗装された道路を表し、下側のまだら模様は舗装されていないダートを表す。車は道路からダートに向かってななめに侵入するとする。ここで、上記の光の状況と同じにするため、車のタイヤが道路からダートに移った瞬間にダート上のタイヤの速度が落ちるとする(実際にそうなるのかは分からないが...)。

図2:道路からダートに向かって走る車


この車がダートに侵入した後の動きを図3に示す。図のようにななめに車が侵入するとまず、片方のタイヤがダート上に移ることになる(図では右輪)。すると、ダート上にある右輪は速度が遅くなる一方で、まだ道路上にある左輪は速度が速いままとなる。この速度差によって車はもともとの進行方向に対して自然と右向きに曲がる。

図3:道路からダートに侵入した車が曲がる様子

つまり、速度の異なる地面にななめから侵入すると車の進行方向が変わるのである。この車の動きは図1の光の屈折とよく似ているのがわかるだろう。これが、車の喩えを使った屈折の説明である。このように、ある現象をまったく別の事柄を使って理解しようとする方法をアナロジーという。


ここまでは、 n_1 <  n_2 の場合、つまり速度が速い領域から遅い領域に移る場合について説明してきた。それでは、逆に屈折率が  n_1 > n_2 の場合、つまり速度が遅い領域から速い領域に移る場合はどうなるだろうか。 このとき、光は先ほどとは逆に物質の境界に近づくようにに屈折する。実は、このときも車の喩えを使って説明することができるので確かめてみてほしい。(ダートから道路への侵入を考えればよい)