直線偏光の偏光方向を回転させる《1/2波長板 》
・1/2波長板を使うと偏光方向が回転する ・Fast軸またはSlow軸に対して対称に反転させた方向まで回転する
今回は、直線偏光を回転させるために使用する1/2波長板について解説する。はじめに、位相を波長の2分の1ずらすと何が起こるかについて解説し、その後、1/2波長板を回転させる話へと展開していく。
なお、今回の記事は、前回の1/4波長板の記事と似通っている部分が多いため、そちらも見ておくと理解がより深まると思われる。 casual-science-pedia.hatenablog.com
位相を1/2波長ずらすと?
まずは、1/2波長板に光を通すと偏光がどんなふうに変化するのかについて見ていこう。準備として、図1のような縦方向に振動する直線偏光の電場を考える。
電場はベクトルなので分解することができる。そこで、この直線偏光を45°傾いた、大きさが同じ2つの直線偏光に分解してみると図2のようになる。
この図の見方としては、
となっている。
前回の1/4波長板に関する記事では、赤色と青色の直線偏光の位相を (波長の4分の1)だけずらすと、円偏光になることを説明した。それでは、位相を (波長の2分の1)だけずらすとどうなるだろうか。図3に、赤色の直線偏光を だけ遅らせた後の電場を示す。 だけ位相をずらすというのは、電場にマイナス1を掛けるのと同じことなので、図3の赤色の直線偏光は、図2の場合に対して電場が反転している。このとき、赤と青を足し合わせた黒色の直線偏光を見ると、偏光方向が縦向きから横向きに変わっていることが分かる。すなわち、位相を だけずらすと偏光は直線偏光のまま変わらない一方、偏光方向は変化するのである。
なぜ偏光方向が変わるのかを図4を使って2次元的に説明する。位相をずらす前は、青色の直線偏光の電場が左上を向いているとき、赤色の電場は右上を向いていた。そのため、これらを足し合わせると図4左のように縦向きの直線偏光になる。一方で、位相が ずれると、青色の直線偏光の電場が左上を向いているとき、赤色の電場は逆に左下を向く。結果的に、足し合わせた直線偏光は図4右のように横向きとなる。すなわち、赤色の矢印と青色の矢印の足し合わされ方が変わることで、偏光方向が変化するのである。
1/2波長板
位相を ずらすには1/2波長板を用いる。そのため、1/2波長板は前回紹介した1/4波長板と同様に複屈折結晶でできている。1/4波長板と異なる部分としては、複屈折結晶の厚みを調整することで、電場に与える位相差が となっているところだけである。
図5は、上述の図2~4と同様の状況を表しており、縦に振動していた偏光が1/2波長板を通ることで、横の振動に変化しているところを表す。このとき、1/2波長板のFast軸およびSlow軸の方向は、元々の偏光方向に対して45°傾けた配置にする必要がある。なぜなら、図2~4の青色の直線偏光がFast軸を、赤色の直線偏光がSlow軸を通るようにするためである。
偏光を回転させる
ここまで、1/2波長板のFast軸とSlow軸を、元々の偏光方向に対して45°傾けた状況だけを考えてきた。ここからは、そのほかの状況、つまり、1/2波長板を光線軸(図5の黄色矢印)に対して自由に回転させる場合を考える。
まずは、図6左のように、元々の偏光方向と1/2波長板のSlow軸のなす角 が30°の場合を考える。前述の が45°のときは、赤色と青色の矢印は同じ長さに分解されたが、 が45°以外の場合は、赤色と青色の長さは同じではなくなる。このような配置で、赤色と青色の直線偏光の位相を ずらすと、偏光方向は図6右のように回る。 が45°では、真横方向まで回っていたが、 が30°ではそこまでは回らなくなる。
図7は、 をさらに小さくして15°の場合である。この場合は、直線偏光がさらに回らなくなる。
を15°や30°以外の角度にすれば、直線偏光は様々な角度に回転させることができるだろう。以上から、1/2波長板を光線軸に対して回転させれば、直線偏光の偏光方向を好きな角度に回転させることができることが分かる。
具体的に、 の値によって直線偏光がどれくらい回転するのかについて説明する。図8は、これまでの2次元の図を一般化させたものである。この図が示す通り、回転後の偏光方向は元の偏光方向から だけ回転させた位置に来る。もしくは、別の言い方をすると、回転後の偏光方向はFast軸またはSlow軸に対して鏡うつしさせた位置に来る。とりあえずこれだけ覚えておけば、実験で1/2波長板を適切に扱えるようになるだろう。